「……でも、そんな自分はもうやめる!
もっと人と関わって、私は私の世界をもっともっと広げたい。」
ブラインドを突き抜ける夏の日差しが、背中に照りつけてはやる気持ちを後押しする。
決意表明をした達成感で、胸がはち切れそうだ。
近江涼介が差し込んだ陽光に目を細める。
それでも私とまっすぐ向き合って、黙って話を聞いてくれている。
「だからね、M大を受けてみようと思うの!
他校との交流もあったり、留学制度がすごく充実してたりしてて、とにかくいろんな人と出会えるかなって。
……あっ、合格ラインにはちょっと足りないから予備校とか行ってもっと勉強しないとなんだけどね。
だからここにもあんまり来れなくなるというか……!」
私が矢継ぎ早に話す最中、不意に近江涼介の手が伸びてくる。
そして私の頭にそっと手を置くと、私の目を見つめて優しく微笑んだ。
「……姫らしい真っ直ぐな選択だな。」
手の動きや表情と違わぬ優しい言葉。
幾度となく“私”を受け止めて理解してくれたその全てが、私の推進力になる。
「私、頑張るから!
友達だってたくさん作るし、もっと先の夢だって見つけるし、もう負けないで前だけ見て進むから!」
頭に置かれた手が甘やかに毛先へと滑り落ちてくる。
そのまま肩を撫でて背中へ回って、近江涼介の胸の中へと引き寄せられた。
布越しの肌感のある熱がとても優しく私を包む。
緊張と昂揚が入り混じるのに、不思議と心が穏やかになって安心する。
心音の響くその胸元に頬を寄せて、思い切り体を委ねてみた。
「……うん。姫ならできる。」
低く、鼓膜を震わせ胸まで届く芯のある声。
喜びが胸いっぱいに押し寄せて、感情のままに表情を緩めた。
整然と机が並ぶ、人気のない無機質な部屋はそこだけ時間を切り取ったよう。
寄り添い合って呼応し合うお互いの心音だけが、時の流れを教えている。



