認識してすぐに驚いて榛名聖の肩を押して距離を取る。
キスされたこめかみを押さえて言葉を失ってしまった。
にも関わらず榛名聖はずっと変わらず穏やかな笑顔だ。
「大好きだよ、ひーちゃん。
君が俺の世界を丸ごとひっくり返してくれた。」
それは、まごうことなき愛の告白。
なのに強烈なインパクトはなく、灯のように胸に残る淡く儚いものだった。
「ずっと言いたかったんだぁ。
――涼ちゃんにはナイショだよ?」
榛名聖の嘘のない視線。柔らかな笑み。
“近江涼介には秘密”。
そう言う割にやっぱり色気は感じられなくて、この“好き”は恋情とは違うのだとはっきりわかる。
「――私も、いつもヘラヘラ笑ってる榛名聖のことが好きよ。たまにウザいけど。」
皮肉めかして片笑う。
クールぶった真顔より、今の榛名聖の表情の方がずっとずっとしっくりくる。
「仕事でもヘラヘラしとけばいいのに。ダメなの?」
「話題になったのがSNSに載った不貞腐れてた俺だからねぇ。しばらくはクール系ミステリアス路線で売りたいみたい。」
「……なにそれ、誰の話してるの?」
だだっ広いリビングの真ん中で、暖色の間接照明が照らす僅かな明かりを頼りにして私達はしばらくの間おしゃべりを楽しんだ。



