姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


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約1年半振りの榛名邸は相変わらず驚くほど大きくて広い。

前来た時は真冬で雪雲が分厚い曇天だったけど、今日はリビングの壁いっぱいの大窓から夏の自然光が差し込んでいる。

「さ、お茶にしよ〜。今日は勉強はナシだからねぇ。」

荷物を置いて、キッチンに立つ榛名聖は上機嫌。

それでなんとなく空気が和んで、私達はダイニングテーブルに着席した。


「久しぶりだ、この感じ。」

榛名聖が入れてくれた名前も知らないいい香りの紅茶を前にして、“いつも”が鮮明に呼び覚まされる。

胸がじわっと切なくなって、でも安心していたりもして。

「旧校舎ではないけどねぇ。」

私の向かい側で、榛名聖が茶化して笑う。
それすらもくすぐったくて口元が緩んだ。