姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


***

そして迎えた夏休み、約束の日。

私達は高級車に揺られて、緑萌ゆる山道を登っている。

「ひーちゃん、お菓子あるよ〜。食べる〜?」

前に座る榛名聖が差し出してきたプレッツェルを口で受け止める。そしてそれを咥えたまま咀嚼した。

「わぁ、ちょっと前まで“お泊まりでお菓子”ってシチュに照れてたのに。成長したねぇ、ひーちゃん。」

ふふんと得意顔で咥えているプレッツェルをぷらぷらと揺らす。

そう、友達と何かするくらいでいちいち照れる私はもういないのだ!

榛名聖の左隣に座る広瀬真は呆れ顔。私の右隣の近江涼介も興味なさげに窓の外を見ている。

「じゃあひーちゃん。そのまま右向いて、ちょっと顔を突き出して〜?」


意図がわからないがとりあえず言われた通りにする。

咥えた棒の先端に、頬杖をついた近江涼介のほぼ後ろ頭の横顔が見えた。