「いよいよ受験本番!って感じだねぇ。」
「そーだよ、忙しいから邪魔すんなよ。」
参考書から目も離さずに広瀬真はピシャリと言った。
油断するとすぐ集中を削ぐようなことを言われることがわかっているからだ。
「今日は邪魔しないよ〜。でもさ、一つ提案があるんだけど。」
張り詰めた空気もなんのその。榛名聖はいつもの如く緩やかな笑顔だ。
「夏休み、2日間だけ空けてくれない〜?別荘行こうよ、俺の家の。」
(別荘……。)
思わず参考書を捲る手が止まる。
ところが、広瀬真も近江涼介も全くいい顔をしていない。
「無理無理、遊んでる暇ねーんだよこっちは!」
「聖も多忙だし、予定合わせるの難しいだろ。」
「えー、でもご覧よ〜。ひーちゃんの顔を。」
榛名聖の手が私のことを指し示す。
ソワソワしていたのがバレていたのかと、慌てて緩んだ口元を引き締めた。
「でもそっかぁ。涼ちゃんもまーくんも来ないのかぁ。
じゃあしょうがないよね、“2人で”遊ぼっかぁ。ひーちゃん。」
榛名聖が態とらしく私の肩を抱く。
“遊ぶ”のワードに強烈に惹かれて私が頷きかけた時だった。
「わかったよ!空けてやるわ2日くらい!」
「たまには息抜きもしないとな。」
2人のため息が漏れる中、私の高揚感は急上昇。
エアコンの効いた涼しい室内にも、ようやく眩しい夏が到来した気がした。



