泣いている私をずっと見ていた近江涼介が、私をすっぽりと包み込むように抱きしめる。
夏服の薄い布越しにじわりと温かな人肌を感じて、その安心感に近江涼介の肩に額を擦り付けて身を委ねた。
「――俺だって寂しい。」
その気持ちを表すように抱きしめる力が強まった。
それを聞いて驚いて顔を上げると、近江涼介が痛々しく、でもとびきり優しく微笑んでいる。
そして、ぐしゃぐしゃの私の頬を両手で覆うようにして拭った。
「心配もあるし、不安だってある。
でも、姫に出会えたからこそ俺は、……“俺達は”この先新しい場所で1人でもちゃんと前を向いて歩いていける。
――そういう強さをもらったから。」
……私、そんな大層なことしたっけ?
そんなことをぼんやりと思えるくらい心が落ち着いたのは、近江涼介にも私と同じ気持ちがあるってわかったからだ。
「私、は……近江涼介達に出会って弱くなったよ。」
高校に入って、大切なものを見つけた。
“私”を受け入れてくれる人。
困った時に助けてくれて、くだらないことで一緒に笑ってくれる人。
いつも一緒にいてくれる人。
旧校舎で過ごす日々が大切で、愛しくて、それが突然なくなって心にぽっかり穴が空いたみたいになった。
3人は平気な顔でどんどん前に進んでいこうとするから、置いてかれたみたいに感じて焦った。
だからそれで、寂しい、悲しいって気持ちになった。
「1人でも平気だったし、何かあれば自分で対処してきたし、助けを求めることもない。
こんな風に泣くなんて有り得なかった!」
八つ当たりのようにぶつける言葉を、近江涼介は静かに受け止めてくれている。
涙が乾ききらない頬をずっと包んでいてくれてるから、自分で涙が拭えない。それに甘んじているのは弱さの証だ。
「……でも、前の私に戻りたいとは思わない。
――弱くてカッコ悪くても、それでも一緒にいてくれる人達とずっと友達でいたいから。」



