姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「ふーん?」

瞬きすらない切れ長の瞳も、軽く真っ直ぐ閉じた唇も、少しも動かない眉も近江涼介が平常心なのを示している。


近江涼介が私の頬に当てた手を緩やかに裏返して掌で頬を包み、 そのまま耳上から指先を私の髪の内側に侵入させる。

近江涼介の骨張った指が耳のアーチを掠めて私の髪を撫で梳く感触に、思わずヒュッと息を呑んで唇を噛み締めた。


「真っ赤。」

髪を滑り降りた手が、私の頭にポンと乗る。
意地悪く片笑うその顔が、憎らしいのに愛おしい。


(悔しい。こんなの心臓いくつあっても足りないわ!)


私がこんなにへろへろになっているのに、余裕綽々の態度なのが腹立たしい。

いつか目にもの見せてやると心の中で息巻いていると、近江涼介が私の頭をポンポンと2度叩いた。



「今週末、空いてる?」

私の頭に手を置いたまま、近江涼介が唐突にそう問いかけてきた。

「空いてる、けど……何?」

赤くなった頬を冷まそうと、冷静になる様顔を顰めて努めながら首を傾げる。

ペンが止まった音が室内に吸い込まれていく。
静かすぎる空間に、心臓の音だけがやけにうるさい。

近江涼介はまたいつものポーカーフェイスに戻って言った。

「じゃあ、一緒に出かけないか?」

「……え?」



まさかまさかの急展開。
次回、初めてのデートです。