姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「模試の出来、どうだった?」

「まぁ、フツウ。」

「なにそれ、まぁいいけど……。」

いつ行っても誰もいない古い図書館の学習スペースで、私と近江涼介はそれぞれテキストを広げて勉強に勤しんでいる。

近江涼介とはほぼ毎日こんな風に放課後は図書館で勉強会をしている。

“勉強会”と言ってもやってることはバラバラだから、ただ同じ空間にいるだけなんだけど。


広瀬真と榛名聖の環境が変わったせいで自然と2人でいる時間が増えた。
けれど、彼氏彼女になったからと言って何が変わったということもない。


抱きしめられたのだって、あの時一回だけだ。


(……別に抱きしめられたいってわけじゃないんだけどね!)


思い出して顔が熱くなってしまった。

バレてないかと勉強に打ち込む端正な横顔を盗み見れば、視線に気づいて深い黒目がこっちを見た。


「……何?顔赤いけど。」

シャーペンを置いて、近江涼介が私の頬を手の甲で撫でる。

甘やかに優しい手の動きに、キュンと胸が鳴って耳まで赤くなってしまったことを自覚した。


「な、なな、なんでもない!!」


なんか負けた気がして力強くそう言った声は裏返った。

強がって合わせようとした視線はブレブレで、それで余計に正常に思考が難しくなる。