姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「W大、K大、A大……」

時間を持て余した昼休み。

進路相談室で私は壁一面の本棚にずらりと並ぶ赤本に書かれた大学名を指でなぞり読み上げながら本棚の端から端までとぼとぼ歩いている。

広瀬真も榛名聖も、そして多分近江涼介も、みんな自分の道を見つけて前に進もうとしている。


私は、どうだろう?


今までは“女に復讐する”というモチベーションだけで突き進んできた。
その執念が成仏した今、正直なところ進むべき指標を失っている。

とりあえずどうとでもなる様に勉強だけはしてるけど……なんだかなぁ。

――未来はどうなっているんだろう?

広瀬真はアメリカで、榛名聖は芸能界で。
きっと気軽には会えなくなる。

近江涼介……とは、会えるか。
お互いただの学生の予定だし。
か……彼氏、だし。


できることならみんなで賑やかに過ごす“いつも”をずっと続けたい。

でもそれは不可能で、みんなはどんどん前に進んでいくんだから置いていかれるわけにはいかない。


「寂しいな……。」


旧校舎でくだらない話をして4人でテーブルを囲む日々を思い出して切なくなる。
未来が見えなくて、どうしても過去の思い出に縋ってしまう。

“未来に乾杯”って言ったのにね、と自嘲して、弱虫な本音を心の奥底にしまうことにした。