姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「とりあえずみんな進むべき方向が決まって、それに向けて頑張ろうと言うことで〜。
今日は決起集会だねぇ、乾杯しようよ。」

そう言って榛名聖は新たに全員分の紅茶を淹れ出した。

嬉しそうな様子に、同調しきれずドキッとする。
だけど水を挿したくなくて、意識的に声のトーンを上げた。

「……いいわね!そうしよう、そうしよう〜!」

笑顔を作ってティーカップを手にする。

「紅茶だけどな。」

淡々と言いながら近江涼介もそれに続く。

「お祭り騒ぎが好きな奴らだな……。今日だけは悪くない気もするけど。」

うんざりした態度の広瀬真も満更ではなさそうだ。

みんなが前に――未来に進もうとしている。

「カップは持った〜?」

榛名聖の声掛けにみんながティーカップを掲げる。


「じゃ、ひーちゃん音頭よろしくねぇ。」

「えっ。」

ヘラヘラ顔と仏頂面と顰めっ面が一斉に私の方を向く。
私は態とらしく咳払いをして、余裕たっぷりの満面の笑顔を見せた。

「……みんなが望む未来に進めるように!頑張るぞ!かんぱーい!!」

高く掲げたティーカップをコツンとぶつけ合う。

「ぅ熱っづ!!お前勢いつけすぎなんだよ!中身熱湯だぞコレ!」

「反射神経鈍いわね!跳ねた紅茶くらい避けなさいよ!」

「できるかボケ――!!」

「こんな時でも喧嘩するんだねぇ、まーくんとひーちゃんは。」

「多分一生やり続けるんだろうな。」

これが一先ず最後のいつも通り。

その笑い声が終わってしまわないように、 私は必死に笑っている。


寂しい気持ちは胸にしまって、歩き出さなくちゃ。

―――第47話 fin.