「私が大変な目に遭ってたってのになんで助けに来なかったのかな〜?
三途の川を見たのよ私は。新年度初日が命日になるところだったのよ!」
「だから、なんで俺だけ締められんだよ……ッ!」
花道で見ている女共が「乱暴しないで!」「最低!」とか喚いているけど気にしない。
キリキリと締め上げていく内に、手応えが違うことに気づく。
なんと言うかそう、しっかり上がっていかない様な……
「広瀬真……なんか背、伸びた?」
訝しみながらパッと手を離すと、構えていなかった広瀬真が2、3歩よろける。
咳き込みながら乱れた襟元を正して、私のことをキッと睨んだ。
「当たりめーだろ。
2年もすりゃ俺だって背くらい伸びるわ!もうチビとは言わせねぇぞ、ブス!」
そう言ってそっぽ向いた広瀬真の姿をジッと見る。
榛名聖と近江涼介に挟まれているとやっぱり薄まるが、単品で見ればそこらの男よりはスラッと長身に見えるような。
毎日一緒にいると変化に気づきにくいもんだなぁ。
そう思って近江涼介と榛名聖のことも順番に凝視したけど、この2人の変化はわからなかった。
もともと年齢よりだいぶ大人びて見える奴らだし、そんなもんか。
「ところで近江涼介!アンタにも怒ってるんだからね!?
あれは“俺の女なんで”って颯爽と助け出す場面だったでしょうが!!」
気を取り直して怒りを再熱させてビシッと近江涼介を指差す。
私の隣で天音ちゃんが「そうですそうです!」と応戦する中、近江涼介を始めとした3人はどこ吹く風だ。
「言うわけないだろ、そんなセリフ。」
「少女漫画の読み過ぎだよ〜?ひーちゃん。」
「お前、そんな寒いこと言われて嬉しいか?
感性わからねぇわ……。」
ハイ、解散とばかりにシラけた3人は私に背を向けてさっさと校舎に入っていく。
近江涼介がほんの一瞬だけ振り返って、口元を僅かに緩めたのには気付かない。
馬鹿にされたのが悔しくてキィッと肩を怒らせながら、私は天音ちゃんを引き連れて走って後を追っていった。



