しん、と思い沈黙が室内を満たす。
吹きつけた風が古い窓ガラスに当たってガタガタと音を立てている。
今まで男にも女にも“女”としてしか見らず傷ついてきた姫には、恋愛抜きで“1人の人間”として付き合える存在が必要だと思った。
だから自分がそれになろうと誓った。
――それなのに。
『アンタは近江涼じゃなくて、近江涼介なんだから。
一緒に探そう。好きも嫌いも、嬉しいも悲しいも全部。』
そう言って微笑んでくれた表情。
いつか繋いだ手の感触。
常にがむしゃらに走っている姿勢。
自分に好意を向ける態度。
姫の一挙手一投足に、誓いを揺るがされ続けている。
苦いのに甘い胸の疼きに小さく眉根を寄せる。
姫のことを思い出すと、じわりといろんな感情が湧き出してくる。
その想いが募れば募るほど――怖い。
恋情なんて脆いもの、きっとすぐ破綻する。
“涼介である俺が”初めて心から好きだと思った存在だから。
――失いたくない。
大切過ぎて絶対に離れていかない方法ばかり考えてしまう。
“ちゃんとひーちゃんを振って”
(――でも、それは俺の自分勝手な考えだ。)
揺らぐ視線の焦点を合わせ、聖の言葉に頷こうとした時だった。
「アイツは何があっても離れていかねぇだろ。」
真の確信めいたキッパリとした言い切りに、目を見開く。
凛とした表情と強い目の光に、殴りつけられた様な気がした。



