旧校舎のいつもの教室に、今日は陽の光が差し込まない。
空はどんよりと分厚い雲が覆って、春らしくない寒々しさだ。
「――で?
なーんで涼ちゃんはひーちゃんのことを避けているのかなぁ?」
目の前に座る聖が鋭く俺を睨む。
その顔にいつもの笑顔はなく、苛立ちを隠すことなく押し出している。
“距離を置くのは1番最悪な手だと言っただろう”
そう責めている顔だ。
「…………。」
フイ、と静かに視線を逸らす。
胸を満たす暗く澱んだこの気持ちを、見透かされたくはなかったから。
「ひーちゃんの気持ちもしようとしてることも全部勘付いてるよねぇ?
それなのになーんーで、避けてるのかって聞いてるんだけど〜?」
聖が痺れを切らして机面を叩く。
こんなに感情的なのも珍しい。
――それだけ姫を大切に想っているということなのだろう。
過干渉だとは思うが、アイツのために迷わず立ち回れるその身軽さが羨ましい。
「涼介はどう思ってんだよ。――姫のこと。」
真の真っ直ぐで芯の通った声が、イライラしてピリついた雰囲気に切り込んだ。
その眼光は強く鋭くて、“逃げるなよ”というメッセージを強く発している。
――俺にはない、意志の強い目。
出会った時からそうだった。
いつか読んだ物語に出て来た主人公みたいな眩しさ。
それが強い引力になって、胸の奥に仕舞おうとした気持ちを口まで引き上げた。
「大切に思っている。
――すごく。」
自分の強い気持ちと直面する感覚に慣れず、ぼんやりとした視線は下を向く。
真も聖も驚き、空気を張り詰めさせていたの忘れてぽかんとしている。



