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翌日の昼休み。
姫と聖が自販機に飲み物を買いに行くと言うので、旧校舎のいつもの教室で俺と涼介は2人きりになった。
丸テーブルに向かい合わせで座って互いに沈黙する。
誰も盗み聞きできない空間に2人になったのは偶然ではあったけど、これはいい機会だ。
俺と涼介の隣、今は空席になっている姫の場所を見つめる。
昨日の今日で完全に傷は癒えてはいない。
けれど、“友達のために”できることをしなければと涼しい顔をした横顔を見据えた。
「俺さ、姫に告白したから。」
淀みなくハッキリと言った声に、涼介は少しだけ驚いた顔をして目線を俺の方に向けた。
「――それで?」
涼介の表情や態度はほんの少ししか変わらないのに、動揺と焦りの感情が分かりやすく漏れ出している。
涼介の本音を垣間見た気がして、苦いような嬉しいような複雑な感情に苦笑した。
「振られた!ハッキリキッパリと。」
一息ついて気丈にそう言った俺に、涼介はまた視線を正面に戻して視線を落とす。
……ムカつく。
姫の気持ちを一時的な気の迷い扱いしておいて、何ホッとしてんだよ。
その澄まし顔を崩したくなった。
ガタンと乱暴に立ち上がり、飄々とした態度を取り繕う涼介の真横に立つ。
俺の影が落ちる作り物みたいな顔がこちらを見上げると、キッと圧倒するように胸を張って睨みつけた。
「俺がずっと姫の友達でいるから。」
切れ長の涼やかな目がみるみる内に丸くなる。
いつも見上げている涼しい顔が崩れる様を見下ろして、少しだけスカッとした。
「何があっても壊れない、そういう友達になるから。
――だから涼介は、ちゃんとアイツと向き合ってほしい。」
変わらない友情を示す役割は俺がやる。
お前にはもっと他にできることがあるだろ。
俺のことを見ている涼介の目は、人間らしく感情に揺らめいていたのに、突然感情がフッと閉じて光が消える。
「考えておく。」
無機質な能面。
それが紡ぐ言葉は少しも感情が篭っていなくて、そのつもりは一切ないことを暗示している。
「……なんでなんだよ……!」
やるせなく机上を殴ったその問いに、返事が返ってくることはない。
涼介がここまで頑なな態度をとる理由はなんだ?
考えてもわからなくて、俺は小さく舌打ちをした。



