姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


***

翌日の昼休み。
姫と聖が自販機に飲み物を買いに行くと言うので、旧校舎のいつもの教室で俺と涼介は2人きりになった。

丸テーブルに向かい合わせで座って互いに沈黙する。

誰も盗み聞きできない空間に2人になったのは偶然ではあったけど、これはいい機会だ。


俺と涼介の隣、今は空席になっている姫の場所を見つめる。

昨日の今日で完全に傷は癒えてはいない。
けれど、“友達のために”できることをしなければと涼しい顔をした横顔を見据えた。


「俺さ、姫に告白したから。」


淀みなくハッキリと言った声に、涼介は少しだけ驚いた顔をして目線を俺の方に向けた。

「――それで?」

涼介の表情や態度はほんの少ししか変わらないのに、動揺と焦りの感情が分かりやすく漏れ出している。

涼介の本音を垣間見た気がして、苦いような嬉しいような複雑な感情に苦笑した。


「振られた!ハッキリキッパリと。」


一息ついて気丈にそう言った俺に、涼介はまた視線を正面に戻して視線を落とす。

……ムカつく。
姫の気持ちを一時的な気の迷い扱いしておいて、何ホッとしてんだよ。

その澄まし顔を崩したくなった。

ガタンと乱暴に立ち上がり、飄々とした態度を取り繕う涼介の真横に立つ。
俺の影が落ちる作り物みたいな顔がこちらを見上げると、キッと圧倒するように胸を張って睨みつけた。


「俺がずっと姫の友達でいるから。」


切れ長の涼やかな目がみるみる内に丸くなる。

いつも見上げている涼しい顔が崩れる様を見下ろして、少しだけスカッとした。

「何があっても壊れない、そういう友達になるから。

――だから涼介は、ちゃんとアイツと向き合ってほしい。」

変わらない友情を示す役割は俺がやる。
お前にはもっと他にできることがあるだろ。

俺のことを見ている涼介の目は、人間らしく感情に揺らめいていたのに、突然感情がフッと閉じて光が消える。

「考えておく。」

無機質な能面。
それが紡ぐ言葉は少しも感情が篭っていなくて、そのつもりは一切ないことを暗示している。

「……なんでなんだよ……!」

やるせなく机上を殴ったその問いに、返事が返ってくることはない。

涼介がここまで頑なな態度をとる理由はなんだ?
考えてもわからなくて、俺は小さく舌打ちをした。