姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


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――……

やってきたのは例の秘密の屋上。
今日は少し暖かい日とはいえ、3月中旬の夕方近くはまだ寒い。

広瀬真はコートのポケットに手を入れて身を縮めながら、フェンスの向こう側を見ている。

「寒っ。わざわざこんなとこ来なくてもよかったんじゃねぇの?
まだ冬だぞ。」

「いや、真冬にここに呼び出した広瀬真に言われたくない。」

「確かにな。」

クッと広瀬真は笑う。
でも何だかそれはカラ元気のように思えた。

私が広瀬真は気を遣っているって思い込んでいるからそう見えるだけなのかもしれないけど。


「広瀬真。」


いつもなら真っ直ぐ私を見る目が今は少しも合わなくて、こっちを向くように名前を呼ぶ。

広瀬真は観念して視線を向けると、真面目な顔をしている私にいつも通りの顰めっ面をして見せた。

「……まだ自惚れてんのかよ、ブス。」

「自惚れじゃないよ。」


“いつも通り”に安心しない。しちゃいけない。

これは広瀬真の優しさだって、私、ちゃんと知ってるよ。


真っ直ぐ、真剣な姿勢は崩さない。
自分にも、広瀬真にも逃げ道を用意しないために。


私の態度に広瀬真は面食らって何も言えないでいる。

なんでだかずっと切ない気持ちが悟られないように、意識して口角を上げた。


素直にぶつかればきっと、広瀬真は“友達”のまま私を守ろうとする。

――だから、私は今からズルいことを言うよ。