「それならさ、告白しようとか振り向かせようとかしないの〜?盗られちゃうよ?涼ちゃんに。」
「それはしない。」
聖の意地の悪い質問に真は迷いなくハッキリと即答した。
確固たる意志が感じられる真面目な顔つきだったのに、直後に見せた顔は目を伏せて少し曇った表情だった。
「……結果が見えてんのに告っても、アイツを困らすだけだろ。」
この短いやりとりの中で、聖は何度衝撃を受けただろう。
真を利用した罪悪感がまたもチクチクと胸を傷ませる。
自分が“姫を助けろ”と煽らなければ、真が自分の思いに正直に突き進んでちゃんと気持ちを昇華させることができたかもしれないのに、と。
(そんなこと思ったってもう遅いけど。)
真の気持ちなんてどうでもいいと割り切ってしたことを、今更後悔しているなんてらしくなくて笑える。
(これなら2人とも不必要に傷つくことはないだろうし、
……この件からはもう手を引こうかなぁ。)
そう思って何も言わずに前を向こうとした、時だった。
「言っとくけど、聖のせいじゃねぇからな。」
驚いて、再び真の方を見る。
すでにノートに視線を落ちている気の強そうな猫目には、揺らぎなく言葉に偽りがないことを示している。
「全部俺の選択で、全部俺が正しいと思ってしたことだから。
だから聖のせいじゃねぇ。」
(……苦手だなぁ。その綺麗すぎる真っ直ぐさ。)
そう思うのに、ちょっと救われた気持ちになった自分に苦笑した。
タイミングよくチャイムが鳴って、クラスメイト達も姫も慌ただしく席に戻ってくる。
次の授業が始まる時には、2人何事もなかったかのように静かに机に向かっていた。



