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誰もいなくなって、さっきまでのことがなかったかの様に静まり返った体育館裏。
緊張の糸が切れて、どっと疲れが押し寄せて溜息を漏らす。
自分の非を認めて謝るって、結構エネルギー使うことだったのね……。
それと、嫌われていることをちゃんと真正面から受け止めるのも。
「あ――……疲れた……。」
夕日がピンクに染まった空を見上げて白目を剥く。
まぁ、元はと言えば私が悪いんだけど。
ちょっとくらい愚痴ったっていいよね?
「すげー顔だな。化け物みてー。」
「あ゙?」
突然投げつけられた失礼な言葉に反射的に低い声を出してそちらを見れば、失礼トリオがぞろぞろ建物の影から出てきた。
「ひーちゃんごめんねできて偉かったねぇ。頑張ったね〜。」
榛名聖が小刻みな拍手を送ってきた。
その態度からも言葉遣いからも、なんか馬鹿にされているのがわかるからムッとする。
ふと視線をずらすと、変わらない無表情の近江涼介と目が合った。
「お疲れ。」
「……うん。」
文句を言おうとしたのに、ぐっと勢いを止められた。
あーもう、だめだなぁ。
自分の力だけで乗り越えようと思ってたのに。
近江涼介は無表情で、広瀬真は顰めっ面。
榛名聖はヘラヘラと笑っている。
いつもの面々のいつも通りの顔を見て、不覚にもホッとしている自分もいたりして。
「て言うかなんでここにいるわけ!?いつも陰で覗き見して。そういう趣味なの!?」
「お前が不特定多数の女子に怪文書送りつけたって学校中の噂になってたんだよ!バーカ!」
「気でも触れたかってざわついてるの気づかなかったのは姫くらい。」
「本当視野狭くなるとびっくりするくらい鈍感になるよねぇ。ひーちゃんって。」
「何この総攻撃!悔しい!許せなーい!!」
怒りの感情に身を任せて地面を思い切り踏み鳴らす。
こんな自分を受け入れてくれる奴らがいるから自由に振る舞えるのだと、家に帰ってからようやく気付いた。



