姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「ちょっと、円!?」

いつぞやの前髪パッツンとゆるケバが慌てて小林円を押さえようとするのを、彼女は控えめに手で振り払う。

不安と緊張で倒れそうになっている頼りない立ち姿なのに、その顔は強く前を見ている。

「……藤澤さんだけが悪いわけじゃないかなって……。

私達だって入学当初から“悪女”って決めつけてました。
それに私は……彼女を利用しようともした。

だからあの、両成敗というか……!」

数十人から注目されていることに耐えきれなくなったのか、最後はごにょごにょと萎むようにして小林円の主張は終わった。


前髪パッツンに「何やってんの!」って叱られながら人混みに引っ張り込まれて見えなくなったし。

相変わらずカッコつかない鈍臭い子。


でも、庇ってくれた人がいたことがすごく心強くて胸がジーンと熱くなった。


小林円の発言によって、女共の勢いが途端に無くなる。

痛いところを突かれたみたいな顔をして、でも許せないみたいに「でも、だって」と互いに顔を見合わせ合う。


「別に許してくれなくてもいい。
自分の非を認めて謝りたかっただけだから。

ごめんなさい。」


何度も頭を下げられて、流石の女共も意気消沈して1人また1人と去っていく。

罪悪感に気まずそうな人もいれば、ずっと私への嫌悪や怒りをを露わにしている人もいて、自分がしたことの重大さを痛感する。



私を庇った気弱な女が友達2人に「帰るよ」と何度も促される。
それでもずっと心配そうにこっちを見ているから、私はその子に向かって声をかけた。


「円ちゃん!」

小林円の不安そうな顔が驚きに変わる。

私も私で、緊張で胸がドキドキしている。


「……ありがとう!」

上擦ったし、思ったより大きな声になってしまった。

空気も読めず顔を赤くしてドギマギしながら彼女の反応を待っている私に、小林円は困ったような嬉しそうな笑顔を見せて友達に背中を押されて帰っていった。