姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「――で、元・生徒会長に下心だって言われて衝撃を受けて!
“恋させた”って思ってた自分はとんだ自惚れ野郎だと思ったらもう恥ずかしくて――……!!!」

ワッと感情を溢れさせて机に突っ伏す。

近江涼介はやっぱり今日も、私が話し終わるまで黙って聞き役に徹している。


「しかもね、私が恋させられなかった元・生徒会長を、会長ファンの地味女1が落としたらしくて!
今付き合ってるんだって!

もうなんで!?って!不可解すぎるでしょ、恋愛!」

グズグズ愚痴を垂れている私を見て、近江涼介はまだ何も言わない。
その無表情なダンマリに私もだんだん冷静になってきて、気持ちが整理されてきた。


「……いや、違うな。
なんか負けた気になったけど、当然よね。」

一息ついて真面目な顔でそう言った私に、近江涼介は少し意外そうな顔をした。

「いくら私と言えど、ちょっとちょっかいかけたくらいで本気の恋にはならないのよ。
その子(地味女)の方が、会長との距離を縮める努力を惜しまなかっただけってことだわ。」

達観したことを言ったのが意外だったのか、
女に対して素直に敗北を認めたことが意外だったのか、
あるいはそのどちらもか。

見開いた近江涼介の目を見て、苦笑した。

「他人の恋心を私利私欲のために弄んでしまったことを悪いと思って謝罪行脚してたけどさ。

みんな私の見た目と作ったキャラクターに少し惑わされただけ。

本気で好きになってくれた人なんていなかったのよ。結局。」

“男なんてどうでもいい”
“私に鼻の下伸ばすだけの生き物”

そんな風に見下していたのに、いざ好かれていなかったと知ったら気持ちが落ち込んでしまうのは何故だろう?


「“誰にも”好かれてなかったと思ってる?」


拗ねてそっぽ向いた私の顔を、近江涼介は身を屈めて覗き込む。

その言葉にハッとした。


――あぁ、そっか。

“男には”好かれてるって思ってたのに、実は男にも女にも、
“誰にも”好かれてなかったってわかったからショックだったのか。

形容できなかった気持ちがストンと腑に落ちて、それが悲しくはあったけど少しだけスッキリした。