「あれは誰だって心配しますよ、目に生気がなかったですし。」
「血相変えて走ってきたから何事かと思った。」
近江涼介に向かう天音ちゃんの表情は、以前よりもっと柔らかくなって声も少し高く感じる。
「もう」と腕を天音ちゃんが軽く叩いたのを、近江涼介は嫌がらない。
――いつの間にそんなに仲良くなったの?
心臓がザワザワして、毒が回ったみたいに強く痛み出す。
会話を重ねる2人の姿が、近いのにものすごく遠くに感じる。
2人は別に何も悪いことはしていないし、ただ仲良く会話をしているだけ。
――なんて身勝手なんだろう。
相手の何気ない言動に勝手に喜んだり傷ついたり。
こんなのエゴの塊じゃないか。
好きな人が他の人を見ている。
それだけのことがこんなに苦しくて悲しい。
2人の方に手を伸ばしかけて、ハッとして後ろに隠す。
天音ちゃんと近江涼介の姿が、私の中でどんどん遠ざかっていく。
近江涼介がいなくなるかもしれない不安に、胸が押し潰されそうだ。
(――あぁ、そっか。)
今の私に、“あの子達”の姿が重なる。
だから女共はみんな、私のことが嫌いだったんだ。
何もしてないのに勝手に男が寄ってくる。
そんな私の存在が、あの子達を不安にさせていた。
……でも、広瀬真は違ったな。



