姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「うわっ!……君達、何してるんだい!?」

光に目が慣れてきて恐る恐る前を見れば、そこにいたのは警備服を着たおじいちゃん。
白い光の正体はその手に握られた懐中電灯の光だった。


広瀬真も幽霊ではないことに気付いたのだろう、幽霊(おじいちゃん)の前に立ちはだかり警戒する様に脱力して腕を下す。

私達以上に驚いている様子のおじいちゃんに、私は苦笑いをしながら答えた。

「いえ、あのー……、あの教室に忘れ物しちゃって……。」

「忘れ物?それなら何もこんな真っ暗な中じゃなくて、電気をつけて行けばよかったじゃないか!」

言いながら、おじいちゃんは一度階段のところまで戻って電気のスイッチをつける。
真っ暗な廊下が明るく照らされて、不気味さも恐怖も消し飛んだ。

そう言えば、旧校舎の施錠時間は18時。
それ以前に旧校舎に入ったとて不法侵入ではないし、堂々としていればよかったのだ。

おじいちゃんにお礼を言って、2人でいつもの教室に入る。

シンと急に静かになった空間で、私と広瀬真は微妙な顔のまま立っていた。


「あー馬鹿らし。これ、榛名聖のせいよね!
明日絶対に文句言ってやらなくちゃ!」

気まずい空気を断ち切る様に大袈裟に明るい声を出す。

「だな。それよりほら、早くスマホ探せよ。」

広瀬真もそれに応じて頷くと、ソファにどかりと座り込んだ。

「わかってるわよ!
多分テーブルの上か椅子の上に――……ないわね。」

ここだと思った場所を見るも、探し物は見つからない。
予想が外れて首を傾げながら他にありそうな場所を探し始める私を、広瀬真は呆れた様に見ていた。

「今日の行動ちゃんと思い出せよ。この辺ウロチョロしてなかったか?ソファにいた様な気もするし……」

言われて私もソファに向かう。
広瀬真も立ったりクッションを退かしたりしてソファ周りを捜索する。
私が広瀬真の隣に立ったちょうどその時、ソファの隙間に落ちてしまっていたスマホを見つけた。

「ほら、あったぞ。」
「見つけた!」

――同時に伸ばした私と広瀬真の手が重なった。