姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


確信はない。
でも、胸の鼓動は確信してしまったように速い。
そう思わざる負えない、そんな言葉がしっくりくる。


広瀬真は、まだ私のことが好きなんだ。


呆然としたせいで気怠げな広瀬真が歩き出したのに気づくのが遅れてしまった。
慌てて別の場所に身を隠そうとしたけどもう遅い。

「「あ。」」

目が合って驚きの声が重なる。
私も気まずいけど、広瀬真も同じ様な顔をしている。

長い沈黙。
お互いに目を逸らし合っているのに、なんとなくそこを動けない。

「……とっくに消化してるって言ってたじゃない。」

誤魔化せなくて言ってしまった。
返ってくる言葉が、予想できなくて緊張する。

広瀬真は片足に重心を置いて姿勢を崩し、流した視線を宙に向けながらぶっきらぼうに返事をした。


「あんなのテイよく断るための方便だっての。まだ自惚れてんのかよ、さすが自意識過剰。」

ぐぬぬ……そう言われると何も言えない。

本人が言うのなら自惚れだったのかもしれない。
ムカつくけど。

「覗き見なんて悪趣味なことしてないで暗くなる前にさっさと帰れよな。
何しにきたのか知らんけど。」

「覗きは不可抗力だから!
私はここに忘れたスマホを取りに来たのよ!」

ここで本来の目的を思い出し、そして校舎を見上げてハッとする。

空はほぼ日が落ちて薄暗く、古い校舎がどんよりと不気味なオーラを放って鎮座している。

「…………。」

そのおどろおどろしさにスッと表情が無になって、ゆっくりと隣にいる広瀬真の方を見る。
奴も同じ顔をしてこっちを見ていた。

「広瀬真、どうする?
帰り道、もう真っ暗だけど……。」

「……ビビリのお前の用事に付き合ってやる。
俺は別に怖くねぇけど仕方なくな、仕方なく。」

時刻は現在17時。

互いに背中を押し合って、先頭を押し付け合いながら意を決して暗い旧校舎に潜入した。