呼び出しを無視した挙句ハッキリキッパリ断るべきと言った広瀬真のことだ。
さぞ面倒臭そうな顔をしているに決まって――……
「悪いけど、好きな奴いるんで。すいません。」
その顔つきは真剣だった。
相手に毅然と対峙して、目は力強く前を向いているのに、
“貴方に興味はありません”とハッキリわからせる態度。
そこに付け入る隙はなく、肩を震わせた女が何も言いわず一礼だけして去っていく。
裸の木々の間を抜ける、冬の風が大きく開いた私の目に吹き付けて神経が研ぎ澄まされる。
1人きりになってから物憂げに沈んだ広瀬真の表情を、枝の隙間から差し込んだ夕日照らし出す。
朱色の光と黒い影の陰影がぼんやりと溶けるその顔はとても大人びて見えた。
(――なんで?)
広瀬真は疲れた様に一息ついて、やるせなく後頭部を掻き乱した。
ざわざわとした動悸が止まらない。
足が縫い付けられたようにその場から動けない。
……“好きだ”
――って言われた気がする。



