姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「2人と上手く関われないのは今恋を自覚して間も無くて浮かれてるだけだから、時間が解決してくれるよ〜。」

「浮かれてるの!?私が!?」

ガーンという文字が背後に浮かんで見えるくらいわかりやすく、ひーちゃんがショックを受けている。
つつくと話が進まなくなりそうなので、とりあえず無視をした。

「それで?ひーちゃんは今後どうするつもりなの?
涼ちゃんとのこと。」

「は?“どう”って?」

かなり切り込んだつもりだったのにきょとんとされてしまった。
何となく展開が読めてきて、呆れ笑いしつつもう少し具体的に聞いてみる。

「いやぁ……。
“告白したい”とか、“付き合いたい”とか、ないのかなって〜……。」

「コクハク?ツキアウ?」

まん丸になったひーちゃんのつぶらな瞳には一点の濁りもない。
未知の質問との遭遇に、ひーちゃんの背景に宇宙が誕生したのが見えた。

――これは、あれだ。
恋心を自覚するだけしてスッキリしちゃったパターンだ。

そもそもひーちゃんは今まで他人との関わり皆無な、対人スキル赤ちゃんから、最近ようやく小学1年生になった様な人間だ。

そんなお子ちゃまが、昨日今日自覚した恋愛に展望なんかあるはずがなかった。

なんだか俺まで気が遠くなってきた。
これで俺と同級生って言うんだから、哀愁すら漂うレベルだ。

(………まぁ、いいか。それならそれで……。)

外された調子を取り戻す様に溜め息を吐く。

俺が成し遂げたかったことは、“ひーちゃんをトラウマから救うこと”だ。
それは達成できたし、わざわざひーちゃんの心を急かす必要はない。


……それに、自分自身に呪いをかけて事をややこしくした涼ちゃんに対してはちょっとくらい苦しんで欲しいって気持ちもあるし。

なにより――……

まだ未知との遭遇から帰ってこないひーちゃんを眺めて笑みを溢す。


「もうちょっとだけ、みんなのひーちゃんでいてほしいしね。」