――私は近江涼介のことが、
「すごく、すごく好きみたい……。」
感情に突き動かされるままに、口をついて出た呟きが澄んだ寒空の中に溶けていく。
ほんの数秒感傷に浸った後で、急に広瀬真の気持ちを思い出して「まずい」と慌てて顔を上げた。
「あっ……!広瀬真、あのさ!」
「返事はいらんって言っただろ。」
対峙した彼は眉を顰め鼻をフンと鳴らして堂々としている。
その表情や態度はいつも通りの広瀬真だ。
「こっちはお前への恋心なんかとっくに消化してんだよ!自惚れんなブス!
わかったらとっとといつも通り自信過剰なブスでいやがれブ――ス!」
「な゛……ッ!」
不躾に投げつけられた暴言に言葉を失う。
エモーショナルな空気感はどこへやら、冬の冷たい風が2人の間を吹き抜けた。
(こいつ、この短い台詞の中でブスって3回も言った!許せない!)
反射的に臨戦態勢になって私の目には炎が宿る。
広瀬真は俯いて密かに安堵の息を吐き、眉を寄せて挑発的な半目で憎たらしい顔をした。
「お前がいつまでもウジウジぐだぐだやってっからいい加減ウザかっただけ。
あー、ガツンと言ってやってスッキリしたわ。寒ぃし帰る。じゃーな。」
一転して突き放してくる態度に開いた口が塞がらない。
そんな私に一瞥もくれずに、広瀬真は屋上の出入り口へともう歩き出している。
“私に恋をしている”なんて言ったことが幻聴だったように思える淡白さだ。



