――side 藤澤姫
広瀬真の言葉に、何もかもが飛んでって時が止まったみたいになる。
恋?広瀬真が?私に?
――いつから?
考えても考えてもわからない。
だって広瀬真は出会った時から今までずっと、広瀬真のままだった。
「――あ、」
頭が真っ白だけど、とにかく何かを言わなくてはと言葉を探す。
両頬を包んで囲む広瀬真の手の熱が、じわじわと私に伝播して戸惑った。
「応えて欲しくて言ったわけじゃないから返事はいらねぇ。
俺が聞きたいのは、さっきの質問の答えだけだ。」
真顔でキッパリとそう言った広瀬真が、私を本筋に引き戻す。
それが強がりではなく本音だとわかるから、私ももう一度広瀬真の問いと向き合った。
口が悪くてすぐブスって言う。
そのクセ情に厚くて、何かあったら真っ先に助けてくれようとする。
広瀬真はそうやって、いつも私の友達でいてくれた。
だから、広瀬真がいつどこで、私に恋をしたかなんてどんなに考えてもこれっぽちもわからない。
“俺がお前に遠慮したことなんてあったか?”
――広瀬真が私に恋して、遠慮したことなんて。
「……ない!
広瀬真は、ずっとバカなままだった!」
力強く言った私をポカンと見つめて、広瀬真は笑い出す。
「だろ?だから恋したって俺達の関係は壊れない。」
もう大丈夫だと思ったのか、私の頬から手を離して小さく息をついた。
「……それを踏まえて、姫は涼介をどう思う?」
心臓が鼓動を取り戻したような気がする。
広瀬真の問いかけに、私は近江涼介のことを思い浮かべる。



