姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

―― side 広瀬真

俯いて自身の顔を両手で覆い拒絶を示す姫に、俺は言葉を失った。

(……姫と話せて良かった。)

涼介や聖みたいに、姫の些細な動きで全てを察せるわけじゃない。
だから、自分の目と耳で確かめないと、こいつの本音には気付けない。

捻くれていて強がりな姫の、誰よりも臆病な一面に触れてやっと理解った。

姫は“友達”を安心できる居場所だと思っている。

その関係を変えるのは、やっと手に入れた居場所を壊すのと同義だ。

だから涼介は、友達でい続けることで姫の未来を守ろうとしたのか。

(でもそしたら、“今のこいつ”はどうなるんだよ……。)

今俺の目の前にいる姫は、目も耳も全て塞いで現実を受け入れることを拒んでいる。

いつもしゃんと伸びている背筋も丸まって、見た目通りの儚さで今にも崩れ落ちそうだ。


真冬の冷たい風が一瞬強く吹き付ける。
驚いて顔を上げた姫の瞳が、大きく揺れているのを見てしまった。

将来を悲観して、グズグズ立ち止まってばっかの俺の背中を押してくれたのはいつも姫だった。


(――走れって言ったのはお前だろ?)



だから、今度は俺が姫の背中を押す番だ。