姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


見上げた広瀬真の顔は、凛とした真顔。
だから咄嗟に言い返せなかった。

「バカなお前に教えてやる。
お前はな、栗谷天音に嫉妬してんだよ。」

“嫉妬”

それは絶対に認められないのに、図星を突かれたように言葉が胸に刺さった。

「嫉妬なワケないでしょ!近江涼介は友達だよ!?」

頬を掴む両手首を掴み返して力一杯引き離す。
広瀬真の瞳の強さに負けないように、私も思い切り険しい顔をした。

「友達以外の感情も持ってるからだろ!」

冷たい風が頬を打つたび、胸のざわめきが増していく。
広瀬真の眼力が一層強くなった。


「お前はな、涼介に恋してんだよ!」

銃で撃ち抜かれたような衝撃。
それなのに広瀬真は容赦なく追い討ちをかけてくる。

「認めろバ―――カ!」


広瀬真の両手首を握り締めていた手が、力を無くしてだらりと下がる。

上がる一方だったボルテージも一気に0にまで下がって、動揺が隠せなくなった。

「バ、バカって何度も言わないでよ……。
私が近江涼介に恋とか、そんなこと、あるわけ……」


あるわけない。あっていいわけがない。


「何で“ない”って言い切れるんだよ。
恋したこともない癖に。」

「そんなの、しなくたってわかる!

だってそうじゃなきゃ。
いつも通りに話せなくなって、態度もよそよそしくなって、」

指先が冷えてジンジンと痛い。
目の前が真っ暗になっていく。

「それで……友達じゃいられなくなっちゃう……。」

弱気な声が震えた。

――私に恋したという奴は、みんなどこかよそよそしかった。

勝手に壁を作って、私の中に勝手なイメージを作り上げて特別扱いをする。


私に嫉妬する女共は、必ず誰かに恋をしていた。

だから私に恋の相手に近づくなと言い、自分達からも遠ざける。


“恋”はいつだって、私をひとりぼっちにする。

だから、だからね。


「初めてできた友達に、恋するなんて有り得ない……!」