見上げた広瀬真の顔は、凛とした真顔。
だから咄嗟に言い返せなかった。
「バカなお前に教えてやる。
お前はな、栗谷天音に嫉妬してんだよ。」
“嫉妬”
それは絶対に認められないのに、図星を突かれたように言葉が胸に刺さった。
「嫉妬なワケないでしょ!近江涼介は友達だよ!?」
頬を掴む両手首を掴み返して力一杯引き離す。
広瀬真の瞳の強さに負けないように、私も思い切り険しい顔をした。
「友達以外の感情も持ってるからだろ!」
冷たい風が頬を打つたび、胸のざわめきが増していく。
広瀬真の眼力が一層強くなった。
「お前はな、涼介に恋してんだよ!」
銃で撃ち抜かれたような衝撃。
それなのに広瀬真は容赦なく追い討ちをかけてくる。
「認めろバ―――カ!」
広瀬真の両手首を握り締めていた手が、力を無くしてだらりと下がる。
上がる一方だったボルテージも一気に0にまで下がって、動揺が隠せなくなった。
「バ、バカって何度も言わないでよ……。
私が近江涼介に恋とか、そんなこと、あるわけ……」
あるわけない。あっていいわけがない。
「何で“ない”って言い切れるんだよ。
恋したこともない癖に。」
「そんなの、しなくたってわかる!
だってそうじゃなきゃ。
いつも通りに話せなくなって、態度もよそよそしくなって、」
指先が冷えてジンジンと痛い。
目の前が真っ暗になっていく。
「それで……友達じゃいられなくなっちゃう……。」
弱気な声が震えた。
――私に恋したという奴は、みんなどこかよそよそしかった。
勝手に壁を作って、私の中に勝手なイメージを作り上げて特別扱いをする。
私に嫉妬する女共は、必ず誰かに恋をしていた。
だから私に恋の相手に近づくなと言い、自分達からも遠ざける。
“恋”はいつだって、私をひとりぼっちにする。
だから、だからね。
「初めてできた友達に、恋するなんて有り得ない……!」



