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榛名聖を帰す時間がいつもよりかなり遅くなってしまった。
マンションのエントランスで榛名聖の迎えを待つ間、私達は2人で立ち話をしていた。
「今日はありがとうね!
榛名聖がいてくれなかったら、まだモヤモヤしたままだったと思う。」
今日何度も兄達に言われて耳タコであろう感謝の言葉を、私からも伝える。
それでも榛名聖は飽きた様子も見せず、顔をくしゃりとさせて笑った。
「どういたしまして。俺としても今日居合わせて良かったかな。
……おかげで根本的な原因を潰せたし。」
「ん?なんか言った?」
最後の言葉はボソボソとくぐもっていて、ちゃんと聞き取れない。
首を傾げて聞き返すと、榛名聖は「なんでもない」と首を横に振った。
マンションの前の道路を、走ってきた車のヘッドライトが明るく照らす。
どうやらタイムリミットだ。
「じゃ、迎えがきたし帰るねぇ。
一緒に待っててくれてありがと〜。おやすみ。」
「うん、おやすみ。」
あっさりと踵を返して車に乗り込んでいく榛名聖を、手を振って見送る。
冬の澄んだ空気が心地いい。
私はスッキリとした気持ちで部屋に戻った。



