「……そう、よかった。」
心から思ってそう言える。
そして遠慮なく満面の笑顔を向けて拳を作った。
「じゃあ、最後に。
一発殴らせて?」
「「「「え?」」」」
その場にいた全員が一斉に目を丸くした。
「許すかどうかはまた別の話なのよねぇ……!」
力を込めた握り拳を掲げて見せる。
口角はこれ以上ないくらい上がって不敵の笑顔だ。
「不幸ぶって別の男に縋るとか、私の嫌いな女の要素全部乗せでホンットムカつくわぁ。
アンタのせいで兄ちゃんたちが自分を犠牲にして、どれほど苦労したと思ってんの?
綺麗な話でなんて絶っっっ対終わらせない!
男の兄ちゃんが女のアンタを殴ったら色々問題になりそうだから、代わりに私がやってやる!」
息継ぎもせずに捲し立てながら近づく私に、母親は顔を引き攣らせて尻込みする。
「早くそのご自慢の面貸しなさいよ。ホラホラホラ。」
「ひ、姫……?待って、お母さんそれはちょっと……!」
「うるさい!恨むなら“人を殴ってはいけません”って教育もせずいなくなった自分を恨むのね。
喧嘩上等で育ってきた“地味な”娘の成長、自慢の顔にしっかり刻んどけー!」
「姫!いいから!」と渉兄ちゃんは慌てふためく。
「やっぱり世界一気ぃ強いわ、ウチの妹」と傑兄ちゃんは誇らしげ。
「あっはははは!
いいね、やっぱりひーちゃん最高!」
榛名聖は涙が出るほど笑っていた。
この後すったもんだの鬼ごっこに攻防戦が続いて――
パァン――と乾いた音が響く。
遠慮なく思いっきりビンタした。


