「あれ、お前らまだいたのかよ?」
勉強を済ませて教室から出ようとした真が姫達の姿に気づいて声をかける。
それと同じタイミングで姫がそちらに振り返り、真に気づかずその目の前を駆け抜けていく。
その時一瞬見えた表情は、眉根をギュッと寄せて傷ついた様な顔をしていた。
姫の様子に真が驚いている少しの間に、今度は涼介が姫の姿を目で追う様に振り返る。
そのまま駆け出す態勢になったのを、榛名聖の声が制した。
「――涼ちゃん。」
涼介が見た聖の顔は笑っている。
その口元は緩やかに弧を描いてそれを示しているのに、目は妖しく、そして冷たく光っていた。
“姫に深く踏み込まないと言ったのはお前だろ”
そう咎める様な視線。察しのいい涼介は正しくそれを受け取って、姫が消えていった突き当たりを一瞥しただけでそれ以上何をするでもなく黙ったままになった。
「ひーちゃん、待って。」
涼介が大人しくなったのを確認して、聖は姫が走っていった後を追って駆け出した。
その時呆然としている真にも気づいて、彼が一部始終を偶然目にしたのだろうと予想したが、今は気付かないフリをして通り過ぎていった。



