姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


参拝の列は最後尾だった時よりかなり進んで、もうすぐお詣りできそうだ。
2人それぞれに財布から賽銭を取り出しながら列を詰めていく。

「姫ちゃんのご両親はどんな方なんですか?」

「父親は仕事人間で、一緒に住んでるけど私が寝てる間に帰ってきてそして出ていくから滅多に顔を合わせないレアキャラ。

で、母親は……」

“このことは、お母さんと姫の秘密よ――……”

いつか断片的に思い出した言葉をなぜか今完璧に思い出して驚いて目を大きく見開く。

そっか、あれを言ったのは私のお母さんだったんだ。

理由はわからないのに、お腹にずしんと負荷がかかった様な暗い気持ちが心を翳らせた。

「……母親は……。
母親は、海外を飛び回って働いてるから小学生になったばかりの頃くらいからずっと会ってない。」

「そうでしたか!それは寂しいですね……。」

「いや、ウチ兄ちゃんが2人いるんだけど、その2人が親に代わりみたいにお世話してくれてたから。
親も常にいないしでそれが普通になってるから、寂しくはなかったかな。」

親の話、特に母親の話をする機会なんて今まであまりなかったから複雑な気持ちだ。

そして、母親に言われたあの言葉がずっと頭に残っている。

“このこと”って何だっけ?
“秘密”って、どうして?

(……だめだ、思い出せないな。)

モヤモヤしている私の様子に天音ちゃんは気づかない。
だから笑顔で会話を続ける。

「お兄さんいたのですね!」

「ああ、うん…。そうだ、今度天音ちゃんに会いたいから家に遊びに来てって言ってた。」

「わぁ、ぜひお邪魔したいです!」

「でもいいの?兄ちゃんてことは男だよ?」

「友達の家族なら問題ありません!」

お喋りをしている内に参拝の順番がやってきて、私達は2人並んで神様に手を合わせた。