「ちなみに剣道はどういうきっかけで始めたの?」
「きっかけは……母を父から守るため、ですね。
女癖が悪くて、母に手を挙げる様な人で……
泣いている母を助けたくて。」
しまった、センシティブな話題だったか!
言いにくそうな困り顔を笑って誤魔化す天音ちゃんに、話題選びの失敗を悟って後悔した。
何か空気を変える様な話題を、と焦る私に気付いたのか天音ちゃんはパンとひとつ手を叩いた。
「でも、おかげで剣道といい恩師に出会えたし、父も撃退できたのでもう大丈夫なんですよ!
その恩師に“見た目や噂に振り回されず、その人の本質を見極めなさい”って教えてもらえたから、姫ちゃんのことを正しく知ることができましたし。」
天音ちゃんは、シャンと背筋を伸ばして真正面を見ている。
ガツンと脳に衝撃が走った。
――あ、この子は心も強い子だ。
辛いことに真っ直ぐ正しく立ち向かって、ちゃんと乗り越えてきたのだろう。
「実は敬語も、恩師に美しい心は美しい言葉遣いからと言われてから習慣づけるようにしたものなんですよ。」
だからすごく眩しくて、捻くれた私をありのまま見せるのを躊躇ってしまうのか。
……羨ましい。
私もそんな風になれたらよかった。
そんなことを他人に対して思う日が来るなんて驚きだ。
自分が自分であることを最高って思っていたのに。



