姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


――あと少しで手と手が触れ合うという時に、急に姫がこっちを向いた。


「っ、!」

あと数ミリの距離感を保ったまま手の平を広げた状態で動きが止まる。

「何?なんか変な顔してるけど。顔も赤いし。暑いの?」

何も知らない姫は、強張る俺の顔を見て「変なの。」とクスリと笑った。

その目に見られて、笑いかけられて、
急に冷静になって現状を思い出す。

――姫は俺の友達で、初めて“俺”をちゃんと見て理解してくれた人で。

喧嘩ばかりだけど、自分が自分らしくいられる居場所で。

そんな姫は俺を友達だと信じきっていて。

だから、心地よくて尊いこの関係を。

「……壊したくねぇなぁ。」

思わず口をついて出た呟きは、喧騒の中に掻き消されて姫の耳には届かない。

不思議そうな顔でこっちを見ている姫に困りつつも微笑んで見せながら、伸ばしかけた手をそっと引っ込めて拳を握った。