姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


レンガ調の噴水広場にやってきた。

中央までやってくると、足元で光の花があちこちに映し出されてくるくると動き回っている。

「すご!なにこれ、どうやって映ってるんだろ?」

小さな子どもがその花をはしゃいで踏んで走る中、私もその一つを足で抑えてみる。

ピンク色の花びらが浮き出すように、じわりとブーツに投影された。

面白くて足元をじっと眺めていると、花は動き出して足元から消える。

すぐ側ででぽっとまた咲いた。

「あの辺のプロジェクターから投影されてるんだろうな。

こんな広い範囲をカバーできるのはすげーと思うけ、ど!」

舞っている光の花に飛び込んで、それを踏んづける広瀬真。

「ふっ。」

カチン。

こっちを見てフンと勝ち誇ったように笑ってきた。
ムカついたので奴を押し除け、同じものを捕まえる。

「私の勝ちね!」

「何だと!?」

お互いに煽りあったせいで、ムキになってくるくると舞うように動く花を踏み合う。

「どけ!」
「アンタがどきなさいよ!」

踏んだ花が消えるたび、隣の広瀬真と肩が軽くぶつかる。そのたびに思わず笑いが漏れる。

まるで子犬の戯れ合いのよう。

浮かぶ白い吐息はどちらのものかわからない。
冷えた床面に賑やかな靴音を響かせていた。


すると、くすくすと笑い混じりの話し声が聞こえてくる。

「あのカップル可愛いね。高校生くらいかな?」

見れば、側のベンチに座っていた二十代くらいのカップルが、寄り添い合って微笑ましそうに私達を見ている。


(……カップル……。)

その瞬間、2人同時にピタリと動きが止まる。

「………………。」

気まずい沈黙。

なんとなく目線を逸らし合い、同じタイミングでそっと離れた。

「そろそろ移動しよっか。」
「……だな。」

すっかり戦意喪失してしまった私達は、何事もなかったかのように並んでその場を立ち去った。