姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

AM 8:20
HRが始まるチャイムが鳴る10分前に教室に着く。

姫と聖はすでに教室にいて、聖が俺の席を占拠して談笑をしていた。

「あら、来たのね。広瀬くん。」

自席の目の前まで来ると、俺が作った影に気づいて姫と聖がこちらを見上げる。
2人とも同じような胡散臭い作り笑顔だ。

「……まぁな、退けよ。」

それに辟易しながら鞄をかけて聖を退かす。

聖はともかくとして、姫は一体いつまで気持ち悪いぶりっことやらを続けるつもりなのか。
女への復讐心だけで毎日よくやるわとある意味感心してしまう。

作り笑顔をしている時は、大体復讐のダシにされる。
あの作った猫撫で声で、妙なことを言われるだろうと予想して身構えた。

「そうだ、宿題やった?1時間目当たるのに、一個わからないところがあるんだけど!」

「は?」

……なんでもない話をされて拍子抜けだ。

一応何かの作戦かとも考えて警戒しながら問われた問題の解説をしていたが、何を仕掛けるでもなく普通にノートを広げて書き込みをしている。

「お前……熱でもあんのか?」

「熱?ないけど?」

「いつものあれはどうした。あの気持ち(わり)ぃやつ。」

「あぁ、すっごく可愛いぶりっこのことね。」

自己評価カンストはいつも通りなのかよ……。
心の中でげんなりして呟く。

「別にもういいかなって。やる気が失せたと言うか――……」

ノートに視線を落として数式を並べながらそう言った姫の顔は、少し赤らんでバツが悪そうな顔をしている。

――なんだよその顔。
しかもあれほどエネルギーを費やしていた女への復讐がどうでもよくなったって、どういうことだよ!?

恥ずかしそうと言うか、照れているような様子で口を結ぶ姫を目の当たりにして、俺が知らない間に一体どう言う心境の変化があったのかと動揺してしまった。

「それ、どういう……」

言いかけた言葉を遮るようにチャイムが鳴った。
それと同時に担任が教室に入ってきたので会話を切り上げざる終えなくなって、俺は悶々としたまま授業に突入することになった。