姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


AM 8:15
学校近くの路地裏で車から降りると、そこからは歩いて学校に向かう。
通学路にいる女子生徒達が、俺が歩いていることに気づくと興奮気味に色めき出した。

「広瀬くんだ!今日も可愛い〜♡」
「ほんと、女の子より綺麗な顔してるよねぇ……。」

(うるさ。)

好き勝手言う奴らにうんざりして顔を顰める。
男が“可愛い”と評されて嬉しいとでも思っているのか。


母親似で、顔の造形が涼介や聖に比べてやや幼いのは自覚している。
身長もまぁ、アイツらと並ぶと小柄に見えるがここ数年で少しくらいは伸びた。


だからどっからどう見ても男なのに、可愛いなんて舐められているようにしか思えない。

「真。」

低く小さいのによく通る低音に振り返る。涼介だ。
涼介の登場で一層女子の声が騒がしくなるのを、アイツは全く気にすることなく俺の隣に並ぶ。

「涼介。はよー。」
「……はよ。」

淡白な挨拶で会話が途切れる。
涼介と2人だと会話がなくなりがちな気がする。

かと言って気まずいわけでもないし、お互い黙ってても平気なタイプってだけなんだと思う。


周りに無関心そうに伏せた涼介の目を囲うまつ毛が長い。
スッと通った鼻筋と主張のない薄い唇、すっきりとした輪郭。

同性の俺でも息を呑むほどの美形だと思うのに、“可愛い”と言われることはない。


(背も高ぇしな、クソ。)

あまり外見の美醜に頓着するタイプではないが、涼介の外見は少し羨ましいと思う。
自分でも気持ち悪い感覚だと思うから、本人に言ったことはないけれど。