姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

AM 5:00
アラームが鳴るほんの少し前に目が覚める。
生活リズムが安定しているから、多分体が自然に目覚めるようにできているのだろう。

1人で寝るには無駄に大きいベッドから出ると、壁にかけられていた皺ひとつない制服に袖を通す。
そうすると一気に気が引き締まって、1日が始まる気がするのだ。

「真坊ちゃん、おはようございます。」

部屋のドアを開けると、俺に向かってスーツを着た初老の男が恭しく頭を下げる。
この人は俺の世話役の坂井。小さい頃から俺の身の回りの面倒を見てくれている人だ。

「うん、おはよう。」

挨拶を返すと、忙しく長い廊下を歩いていく。坂井もその後にぴったりと付いて歩いてくる。

「坂井、今日の予定は?」

「朝食後、ご登校までは政治・経済の学習。特に今朝の新聞の一面、二面の記事にきちんと目を通し、それについて見解を持つよう旦那様から仰せつかっております。
学校からご帰宅後は経営戦略論、マーケティング論の学習は通常通り行いますが、その後19時よりA社の周年記念パーティーに急遽広瀬家も参加する運びとなったのでそちらに同行いたします。」

「わかった。」

スケジュールを聞く間に居間に到着する。
襖を開ける時は、今日は父親はいるのだろうかと毎朝緊張する瞬間だ。