姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


ざわざわとして落ち着かないような、でも、嫌じゃないような。
言い表せない感情に、制服の襟元を掴んで目を伏せる。

(私達は友達、友達……)

自分に言い聞かせるようにそんなことを繰り返す。
ちょっと暑い気がするのは、きっと暖房が効き過ぎているせいだ。

「もう出るか。」

淡々とした声が頭の上に落ちてきて、椅子を引く音がする。
伏せた視線を持ち上げれば、すでに近江涼介は立ち上がっていて学習スペースの出入り口のドアへと向かっている。

「はっ早い!ちょっとくらい待ちなさいよ!」

私が立ち上がる頃には、近江涼介はもうドアを開けて部屋を出ていってしまった。
だから私も慌ててそれを追いかける。

心臓の音はまだ鳴り止まない。
優しくゆっくりと髪を撫でた近江涼介の手の温度が、感触が、生々しく残っている。

(近江涼介は変な奴だ。)

素っ気なくて、掴みどころが全くない。

なのに、私が困った時は欲しい優しさをありったけ与えてくれる。

あったかくて優しい私の大切な友達。