姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「あっ、そう言えばさ。
天音ちゃんが言うにはフルネーム呼びって距離を感じるらしいじゃない?」

近江涼介のおかげで、気持ちがずいぶんスッキリとした。
最近あったあれこれを話していると、ポンとそんなことを思い出す。

「それなら近江涼介達の呼び方も変えたほうがいいのかしら?」

近江涼介は、相変わらず最低限の頷きで聞き役に徹している。
だから私も、安心して試すことができた。

「どう思う?

――――涼介。」

慣れない呼び方が唇に乗るまで、ほんの少し息が漏れる。

フルネーム呼びが定着していた分、なんか照れ臭い気もするけど悪くはないんじゃないかしら。

近江涼介からの返事は返ってこない。
いつも通りの無表情は仄かに驚いているようにも見えて、こっちも戸惑ってその顔を伺い見る。

「……どうしたの?」

――すると、急に手首を取って引き寄せられた。

トン、と近江涼介の肩に額がぶつかる。
そこが触れ合っただけの、ただそれだけの微妙な距離。

手首を握る手は熱くて、もう片方の手は私の後頭部を抱えるようにあてがわれている。