姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


図書館の入り口に人影を見つける。
そこには近江涼介が地蔵みたいに立っていた。

「やっぱり来たか。」

私が近づく足音に気付いてこっちを見たその無表情にホッとして、悶々と悩んでいた気持ちが希望の光を見出したように解れていく。

「近江涼介ぇ……!」

数メートルの距離も惜しくて走ってその近くに寄ると、弱った私を見下ろす目が優しく細くなる。

「変な顔。」
「な゛……ッ!」

撤回。“小馬鹿にしたように”細くなる、だ。

「私はどんな顔だって可愛いから!
変なのはアンタの方でしょ!鼻赤いし!ほっぺだって……!」

あ。

この寒い中、ずっと待っててくれたのか。

作り物みたいな顔に人間らしい血色が差す理由に気付いてハッとする。

別に約束があったわけではない。
私がここに来なかった可能性だってある。

凍えて見える赤らんだ近江涼介の頬に手の甲を当てて、その温度を確かめる。
自分の手だって冷たいのに、それでもキーンと冷たく感じた。

「ごめん。寒かったよね。」

ちょっと申し訳ない気持ちになって、シュンとしてしまう。
けれど近江涼介は、なんてことない顔で私の手を振り払うように顔を背けた。

「大して待ってないし。」

顔を背けた勢いのまま私に背を向けると、図書館の重たい扉を引いて中に入ろうとする。
そうかなぁと浮かない気持ちを抱えつつ、私もそれに続いて暖かい館内へと入っていった。