姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


それを聞いた瞬間にぶわっと花が咲き誇ったような、じーんと甘い痛みが心臓に広がった。

「そう、……そっか。……そうなのね……。」

頭の中が真っ白で、何と言っていいのかわからない。
モジモジと両手の指を絡め合って弄び、唇を開いたり結んだりして落ち着かない気持ちを持て余している。

友達……!嬉しい。
初めて、女の子の…………

自分の中に在り続けた黒い感情が浄化されていくような気がする。復讐を誓った心も、どうでもよくなるほどに。

ずっとずっと憧れて、焦がれてやまなかった存在が、今目の前にいる。

視界がキラキラと光り出す。
胸の奥がジワジワと熱を放っていった。

近江涼介達ももちろん友達で、大切ではあるけれど、“女の子の友達”はやっぱり私にとって特別なものだったらしい。

だって今、すごく感動している。

「なので、私から姫ちゃんにお願いがあります。」

感動に浸ってジーンとしていると、栗谷天音がまだ私を見つめたままそう言った。
ハッと現実に引き戻されるも、まだふわふわとした気持ちで浮かれ顔をしながら頷いて応答する。

なんだろう?今ならなんでも聞いてしまう気がする。

「私のことも、“天音”と呼んでくれませんか?
…フルネームはなんだか距離がある気がするので。」

「へっ!?!?」

予想外のお願いにボンッと全身の体温が上がる。
思わず出た上擦った間抜けな私の声に、カフェテラスにいる誰もが振り返った。

「ダメですか?」
「ダッ……!」

ダメではない!けどね!?
心配そうな栗谷天音の上目遣いにドギマギする。
なんだこれ、思春期の中学生男子か私は。

「わかった……!わかりましたよ、天音……ちゃん。」

恥ずかしくて死にそうだ。
“天音ちゃん”と名前を紡いだ唇は、気まずさにまだ突き出したままもぞもぞと動く。

呼ばれた彼女はと言えば、「はい!」と嬉しそうに返事をして瀕死の茹でダコ状態の私をニコニコしながら眺めていた。