姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


***

そして現在、私は栗谷天音と並んでカフェテラスの窓際の席に座って弁当まで広げている。
“話がある”って言ったって、一言くらいだったのに。

栗谷天音がせっかくなら、と私をランチに誘ってここに連れ出したのだ。

……多分、 B組の女共が私に少なくとも好意的ではない視線を送っていたことに気づいたから。

また気を遣われてしまった。


「お話ってなんでしょう?お弁当を食べながら聞いてもいいですか?」

言いながら栗谷天音は弁当の包みを広げだす。

私の緊張を察して気さくにしてくれてるのか。
栗谷天音の気遣いはさりげないのにわかりやすい。

そして、それは私に対する哀れみではなく優しさなのだと判っている今は、気を遣われるとくすぐったい気持ちになってしまうのだ。

「……あの、大した話じゃないんだけど……。」

緊張してソワソワと膝の上に置いた手を握ったり開いたり。目も合わせられなくて、私はずっと下を向いてそれを見ている。

栗谷天音は終始穏やかな表情で、気長に私が話すのを待ってくれている。


『そんなに心配なら、栗谷さん本人に確かめてみたらいいんじゃない〜?』


昨日ウチに夕飯を食べにきていた榛名聖が、優しく笑いながらそう言ってくれたことを思い出す。

そうだ、こんなもやもやずっと抱えているなんてらしくない。
勇気を出すのよ、姫!

奮起して勢いよく顔を上げると、栗谷天音に真っ直ぐ向き合う。そして大きく息を吸い込んで話を切り出した。