姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「何もないしー?というかなんで近江涼介が私達を見張ってるのよ!1人だけ反省文なしなんてズルい!」

「見張ってるのは俺がやるって申し出たから。
……お前らいないと暇だし。」

近江涼介の最後の一言に驚いて目も口もぱかっとあいた。

榛名聖と広瀬真も同じく驚いたようで、2人とも作文用紙と向き合っていた顔をあげて目を丸くしている。

「……何?」

一斉に注目されて近江涼介はほんの少し眉を寄せ、煩わしそうな顔をする。

私達は今起こったことを確認するように何度も瞬きをしてそんな彼を見ていた。


「今、もしかして涼ちゃんデレた〜?」

「デレたわね。私達がいないと暇〜って言った。」

「サラッと言ったから聞き間違いかと思った。」


「だよね」と今度は頷きあう私達3人に、近江涼介は変わらずしれっとした無表情をしながらも顔を逸らす。

「早く反省文書けば?消灯時間になるけど。」

「今度は照れてる!めっずらしー!」

レアな光景に楽しくなってしまって、近江涼介を指さしてけらけらと笑う。

広瀬真と榛名聖も一緒になって珍しい珍しいと言うと、近江涼介はそっぽを向いたまま地蔵のように動かなくなる。

(なによ、近江涼介。
可愛いところもあるじゃない。)

近江涼介の新たな人間らしい一面を発見して、なんだかくすぐったいような嬉しい気持ちになった。

――そして問題の反省文はというと……
ちゃんと書かないと内申に響きそうだったので、形式的な文章を作文用紙一枚分にきっちり収まるように書いて出した。