姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


***

まずは陥落しやすいひーちゃんの隣へ行って、さっき班の子から貰った飴玉をひーちゃんの口へ放り込む。

「ひーちゃんどうどう〜。落ち着いて?ハイ、これ食べようねぇ。」

「!」

するとすごい形相だったひーちゃんはあっという間に大人しくなって、口の中で飴玉を転がし始めた。

こういうトコ赤ちゃんみたいで可愛いし扱いやすいよねぇ。


さて。次は……
ひーちゃんに近づいたせいで今度は俺を睨みつけ始めた栗谷さんは放っておこう。

木刀で切りつけられたくないし。

「まーくん、あの子はひーちゃんを傷つけようって気はなさそうだから大丈夫だよ。」

「あ゙?」

まーくんの首元に腕を絡めて迫り耳打ちすると、威嚇している犬みたいな顔をしたまーくんが不機嫌そうに唸った。

「どっちかっていうと栗谷さん、ひーちゃんには好意的なんじゃないかなぁ?

――いいの?今彼女を邪険にしたら、ひーちゃんが友達を作るチャンスを逃すことになるかもよ?」

これを聞いて深く刻まれたまーくんの眉間のシワがみるみるうちに薄くなって、スンと黙り込む。

まーくんの頭の上で“now loading……”の文字が浮かんだような間の後で、ようやくまーくんが口を開いた。

「悪かったな!」

栗谷さんに向かって一言。ものすごく不本意そうではあるが、一応終戦に向かってくれたようだ。

やっぱり単純バカのまーくんには、それっぽい理屈とひーちゃんの利害を絡めた説得が効果的だ。

謝罪されたことによって、栗谷さんも渋々っぽいけど矛を収めてくれたみたい。
ずっと構えていた木刀を降ろしたし。

さぁ、あとは、平和にみんなで宿に帰るのみ。

「さっ、じゃあみんなで仲良く帰ろっか〜。なんかちょっとした騒ぎになってるみたいだし……」

「それは無理。」
「それは嫌です!」

栗谷さんとまーくんの声が綺麗にハモる。
そして各々でひーちゃんの手を引いて駅の方へと歩き出す。

「もー、なんでさ〜。」

がっくりしながらその後を追って、俺達はようやく宿に帰ることができた。