「姫ちゃんから離れなさい!この不届き者!!」
突然威勢の良い声がしたかと思うと、ひーちゃんの背後からウチの制服を着た長髪の女の子が木刀を振り上げてまーくんに襲いかかってきた。
奇襲に気づいてまーくんは咄嗟にひーちゃんを押し除けて庇うと、素早く腕を上に翳して打撃を受け止めようとする。
木刀の子は本気で当てるつもりはなかったのか、まーくんに木刀が当たる直前で振り下ろす動作をピタリと止めた。
「痛ったぁーい!さっきからなんなのよ、もう!」
唯一状況を把握していないひーちゃんは、押されたせいで道端に転がった。
その拍子にぶつけた腰を摩って文句を言っている。
その傍で木刀の鋒をまーくんに向けて臨戦態勢のままの木刀の子と、まーくんが睨み合って張り詰めた空気を醸し出している。
誰も息をしない。できない。
空気が一瞬だけ凍りついた。
「テメー、いくら姫が憎いからって木刀で殴るのはやりすぎだろ。
大怪我するとこだったんだぞ。」
低く静かにドスを効かせた声音。
目も座って表情も消えて、本気で怒っているのが見て取れて、彼の父親のような圧を彷彿とさせる。
「ちょっと、広瀬真?どうしたの……?」
これには流石のひーちゃんも動揺して心配そうにしているし、思わず俺も緊張してしまった。
それなのに、そこに直面している彼女は毅然とした態度を崩さない。



