姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「あっ涼ちゃん?ねぇ涼ちゃんのとこにひーちゃんから連絡来てない?
実は今さ……」

聖が電話の向こう側にいる涼介に事情を話していることにも真は気づかない。
ただひたすらに焦って、姫の安否だけを気にしている。

「落ち着いてられっかよ……!」

その声音は必死だ。
だからつい、口走った。

「姫が……“好きな奴が”行方不明になってんのに落ち着けるか!!」

往来で荒げた真の声にしん、と周囲が静まり返る。

走る足は止まっていないのに聖と真の間の時は止まっているようだった。

「……え?」
「あっ。」
「えっ。」

ついに足までもピタリと止まる。

涼介が静かに通話を切った。
聖は驚いて何度も瞬きを繰り返す。

真はといえば、勢いでしてしまった暴露に気づいて冷静さを取り戻し、しでかした事の重大さに気付いて顔を蒸気させる。

――そして、時間が動き出す。

「え……ええ――――――!?!?」

古都の風情残る往来に、聖の驚愕の叫び声が響き渡った。