姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


自由行動時間まであと1時間となった頃。

――ところ変わって、清水寺。

「久しぶりに来たな、清水寺。」
「俺も小学生以来かな〜。京都旅行の定番だよねぇ。」

目立つ容姿の金髪とキャラメルブラウンの男2人に、道行く観光客達が惚けた顔で振り返る。

「幸せ……♡」
「ずぅーっと見てられる♡」

2人の背後で同班の女子4人が、景観そっちのけで並んで歩く真と聖を凝視している。

更に後ろで男子2人が肩身が狭そうな様子で歩いていた。


「涼ちゃんは全然違うところに行ってるみたいだけど、ひーちゃんはこの辺りって言ってたからどこかで会うかもね〜。」

「この制服目立つし、いたらすぐわかりそうだな。」


本道へと続く坂道を真と聖はスタスタと登っていく。

2人にとって京都定番の観光地は何度か訪れている場所なのだろう、特にこれといった感慨もなく散策程度の感覚のようだ。

あっという間に坂を登り切り、清水寺の入り口である仁王門の階段に着いた時、そこを降りてくる同じ制服を着た集団を聖が見つけた。

「あれ?噂をすれば今降りてくるのひーちゃんの班の人達じゃない?
ひーちゃんがどんな仏頂面してるか見ものだねぇ。」

集団の中に1人放り込まれた姫の様子を想像する今が1番楽しそうだ。

ワクワク顔の聖の横で、真も姫の姿を探して目を細めた。


――いない。


聖がそう思うより一瞬早く、真が石段を駆け上がって前方の集団へと迫る。