姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「ひーちゃんって京都自体も初めてなの?」

コテンパンにやられてむくれていると、榛名聖が私の眼前に割り込んできた。

「――そうだけど。
というか、旅行自体あんまりしたことないから。」

空気を自然に切り替えられた。
そんな私の言葉に、榛名聖の目がピクリと細くなった。

「それって――ご両親が忙しいから?」

「そうね。365日仕事してるもの、あの人達。

お父さんには夜中とか朝、たまに会うけど。
お母さんは――」

――あれ?
お母さんに最後に会ったのっていつだっけ?

金閣寺の砂利道を歩く足音がノイズになって耳奥で響く。

脳裏に化粧気のない、優しい輪郭がぼやりと浮かんだ。
微笑む口元は見えるのに、ハッキリとした顔まではわからない。

そういえば、海外赴任になってしまってから一度も会っていない気がする。

「……っ、」

頭が何故かズキンと傷んだ気がした――
けど、すぐ治った。