姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―



ドクン。

心臓が痛いほど大きく脈を打って、花を生けようとした手が止まる。
狭い和室に花を広げ、作品が仕上がるまで1人の時間。

走馬灯のように姫のいろんな表情や仕草が頭を巡って、最後に満面の笑顔が心の中を埋め尽くした。

(俺は今、何を思った?)

姫の声を、抱き止めた感触を、匂いを鮮明に思い出すのに冷静でいられるのは、精神統一できる作業と空間のおかげだ。


俺は、経験不足ではあるけどそんなに鈍くはないし、馬鹿ではない。

(……と、思いたい。)

そんな俺が今、姫に思うことは俄には認め難いもの。
でも、認めてしまえば全てがすっきり腑に落ちる。

(でもいいのか俺!?こんなこと認めて……)

ぐぬぬと往生際悪く歯を食いしばり顔を背ける。
そのぐらい何というか、負けた気持ちになることだ。


「!」

ブブッとズボンのポケットでスマホのバイブ音が鳴る。
それに驚いてビクンと体を跳ねさせた。

「やべ、スマホ置いて来んの忘れてた……」

バレたら生花の講師に説教されるなと思いつつ、また驚かされるのはごめんなので取り出して電源を切ろうとする。


その時にバイブを鳴らした犯人であるメッセージを開いてしまった。

“今日のやつ、真実はどれ!?
①風で私のスカートが捲れ上がってるのを見てしまった
②うっかり胸触った
③女アレルギー(女に触ると全身蕁麻疹)
④熱があった
今言えば許してやるから正直に言え!”


――姫からだ。


斜め上すぎるアホな選択肢に、思わず噴き出しそうになって慌てて口を閉じる。
そのまま音を立てず背中を丸めてくつくつと笑った。


あー、やっぱバカだあいつ。
敵わない、俺の負けだ。完敗だ。

意地張ってるのもアホらしくなる。
もう認めてしまおう。そしたらきっとスッキリする。

「全部ハズレだわ、ブース。」

いつからなのか、感情の継ぎ目がわからない。
思い返せば、多分ずっと前からだ。